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インテグレーションコースの語学クラスで一緒だった友人とご飯を食べに行ってきました。そうしたらDeutsch-Test für Zuwanderer(DTZ) B1で意外なことが分かっていま驚きです。
大本命がまさかの不合格。ぺらぺら話せても受からない!?
わたしたちのクラスには姉御的存在の人がいました。
彼女は難民としてドイツに移住。すでに20年以上過ごしています。子どもが4人いて、全員ドイツ育ち。子育ての手も離れたので、しっかりドイツ語を学ぼうとインテグレーションコースに来ていました。えらいなぁ。
ドイツ語を勉強すると言っても、会話はほぼ問題がないように聞こえました。母国から来た人たちを助けるために通訳のボランティアもしていて、税金や不動産に関する知識も深く、語彙も豊富です。アラビア語も少し話せるので、他の国から来た難民の人々も彼女をとても頼りにしているようでした。
会話がつたないわたしも、休み時間に彼女に相手をしてもらったりしてドイツ語会話を練習しました。テスト前には「大丈夫!タロウはちゃんと話せてるわよ!」と勇気づけてもらい、自信をもらったものです。
実はわたしの方が年上なのですが、「姉御……ッ!!」って言いたくなるような、本当に頼りがいのある人なんです。
しかし、まさかの不合格。
わたしたちのクラスで彼女が不合格になるなんて予想した人は誰もいなかったと思います。
さらにはシリアから来ていたよくしゃべる兄弟も不合格。授業では「話せることが重視される」と聞いていたので、かなりびっくりです。
テストは会話重視ではない?
語学学習クラスの受講者は、おおざっぱに4つのタイプに分かれます。
- 筆記問題も解けないし、会話も上手くない
- 筆記問題は解けないが、会話は上手
- 筆記問題は解けるが、会話は上手くない
- 筆記問題も解けるし、会話も上手
タイプ1が不合格になる、あるいはタイプ4が合格になるのはまあいいでしょう。当然ですよね。で、タイプ2とタイプ3です。先ほどの姉御はタイプ2に、わたしはタイプ3に分類されます。
授業ではタイプ2は受かりやすいが、タイプ3は受かりにくいと言われていました。会話重視だというわけです。事前にそう聞いていたのでナーバスになっていたのですが、蓋を開けてみるとあまりうまく話せないタイプ3のわたしが合格で、会話が上手なタイプ2の姉御が不合格。
まあ、思えば「会話重視だ」と言っていた先生はいろいろとガセ情報を流す人だったので、そもそも「会話重視だ」という情報が間違っていたという可能性もありますが、たぶん合格基準が変わったんじゃないかなと思っています。
3つすべてのパートで「B1」が必須
DTZ B1は3つのパートに分かれています。Hören/Lesen(リスニング/リーディング)、Schreiben(長文筆記)、Sprechen(スピーキング)です。
日本人の人が過去にDTZ B1を受けたというブログを見ると、いくつか「3つのパートのうち、Sprechen(スピーキング)はB1が必須だけど、他2つはどちらかA2でも合格できる」という記事を見かけました。
どうも以前の基準はそうだったようですね。DTZは2005年から始まり、しょっちゅう制度が変わっています。わたしが語学クラスを受けている間にも制度が変更されてすごく迷惑したぐらいなので……。
2016年12月現在はというと「3つすべてのパートでB1が必須」という基準に変わったようです。合格証書にも書いていますし、いまのクラスの先生にも聞いてみたので間違いないかと思います。まあ、また変わるかもしれませんが。
この以前は「Sprechen(スピーキング)はB1が必須。他一つはA2でもいい」という情報を、姉御も知っていたようなので、おそらく筆記試験で油断しちゃったのかなぁと思います。
Sprechen(スピーキング)も文法重視!?
さらに、親しい友人に点数も聞いてみました。彼女はインドネシア出身で話し方がなかなかおっとりしています。5人兄弟の末っ子で、自分から積極的に話すよりも、聞き上手なタイプです。
だからスピーキングの口頭試験はそんなに点が取れないじゃないかと勝手に思ってたんですよね。彼女のテストパートナーがめちゃくちゃよくしゃべる人だったし。
そうしたら「筆記試験はいろいろ間違えちゃったけど、口頭試験は95点だった」とのこと。すごい!ちなみにわたしは83点です。わたしも話し方がゆっくりなので、同じくらいかなと思ってたのに……(失礼な)。
そこでわたしと彼女との違いを考えてみました。
一番大きな違いは彼女は完璧な英語が話せるということ。大学で観光学を学んだぐらいなので、とてもきれいな英語です。彼女の夫はドイツ人で家で練習できたということも要因の一つかもしれませんが、それよりも英語話者だということの方が大きいと思います。
彼女はポツポツと単語を置いていくようにゆっくり話すタイプなのですが、単語のチョイスや文の作り方が英語に近いのでとても分かりやすい。ゆっくりだけど正確なタイプです。
わたしはというと、筆記なら文法は正確なのですが、話すとなるとあわててしまって文法がむちゃくちゃになるタイプです。姉御の薫陶もあり「とりあえず分かる単語を並べろ」方式で話します。
姉御は、語彙はとても豊富なのですが、いかんせん文法が怪しい。過去分詞なんかはちゃんと覚えてるけど、本動詞の人称変化については興味がないみたいです。
「Sie(あなた)」も「sie(彼女)」も同じ本動詞の活用をするので、誰の話をしているか分からないときがあります。でも聞いてる方が「誰のこと?」って聞き直せばいいだけだから、別に困らないかなと思ってました。
しかし結果が出ると明らか。スピーキングでもおそらくは文法が重視されるようになったのでしょう。
話すのが得意ではない日本人にとっては朗報と言えるかもしれません。
職場で顧客・上司と話して問題のないドイツ語を
クラスメイトの何人かはすでに働いていました。「どうやって仕事を探すの?」と聞くと、先にドイツに来ている知人や親せきに紹介してもらったのだそうです。コミュニティ大事ですね。しかしドイツ語が話せないので、できる仕事は単純労働に止まります。
さらにドイツ語には敬語があり、それが彼らの仕事を難しくしていました。
もちろん「Du(君)」というように、友達に話すような話し方はしないそうですが、婉曲的な表現や前置きができないせいで、上司に怒られてしまうことがあるのだそうです。
日本では、間違った日本語を話す外国人を微笑ましいと感じるかもしれません。しかし多国籍な国ではみなが良くも悪くも平等で、外見だけで「外国人」と判断されることは少なく、どんな来歴があったとしても現地語が話せることが重要になってきます。
BMAF(ドイツ移民・難民局)が発表した調査によると、現在の難民の就職率は13パーセントとのこと(ロイター通信社「近年の難民、ドイツ到着後の就職率はわずか13%=調査」より)。
今後彼らがドイツで働くために、顧客や上司と話して問題のない、丁寧なドイツ語が話せるよう、DTZ B1も文法重視になってきているのかなと思いました。
ちょっと気になること。難民で「ドイツ語が話せない人が90%前後」ではない
「難民はドイツ語も話せないし、犯罪率だけ上げている」というような日本の報道を見かけますが、わりとそんなこともないですよ。いろいろ思うこともあるのですが、数字がないと説得力がないのでまとまったらいろいろ書きたいと思います。
とりあえず日本の報道で、難民で「ドイツ語が話せない人が90%前後」という文を見かけたのですが、これは「ドイツ到着時に」が抜けているようです。正確には「ドイツ到着時にドイツ語が話せない人は90%前後」かと思います。
BMAFとドイツの研究所等が共同で発表した報告書の原文を見てみたら、「ドイツ到着時には90%前後の人がドイツ語を話せない」しかし「ドイツに来て2年未満で、18%の人がドイツ語をよく、あるいはとてもよく話せると回答。また35%はほどほどに、47%がほんの少ししか、あるいはまったく話せないと答えている」とありました。ちなみに渡独2年を越えると「32%がよく、あるいはとてもよく話せると自己評価。37%がほどほどに話せると答えている」そうです。わりと話せる方じゃないでしょうか。
わたしのドイツ語力が低いので上手く訳せませんが、こんな感じかと思います。原文はこちら。7ページの「Niedriges Ausgangsniveau, aber steigende deutsche Sprachkompetenz」というところに書いています。
いま難民の人々とインテグレーションコースで学んでいて、難民で「ドイツ語が話せない人が90%前後」はあり得ないなぁと思って調べてみました。
不合格になるともう一度語学クラスをやり直す
DTZ B1を不合格になったら、語学クラスをもう一度やり直してからテストを受けることになります。B1-1からなのか、B1-2からなのかは人によるのかもしれませんが、少なくとも1か月は学校に通わなければなりません。大変……。
姉御はいまオリエンテーションコースなので(オリエンテーションコースはA2を合格していれば受講できる)、終わったら語学クラスに行くそうです。がんばれ、姉御!
Deutsch-Test für Zuwanderer(DTZ) B1当日の様子や勉強についてはこちら。



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