よく「水が合わない」なんて言い方をしますが、海外での不調の場合、原因は水ではなく小麦かもしれません。実際わたしは小麦が原因でした。小麦アレルギーでなくても可能性があるのでご注意ください。
小麦が原因になるアレルギーや不耐症など
まずは小麦が原因になるアレルギーや不耐症などをざっくりまとめてみます。素人が調べた範囲なので知識不足はご容赦ください。誤りがあればご指摘いただけると幸いです。
- 小麦アレルギー
- セリアック病(グルテン過敏症)
- グルテン不耐症
- 小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(運動誘発性小麦アレルギー)
小麦アレルギー
小麦アレルギーはご存じの方も多いのではないでしょうか。小麦に含まれるタンパク質が原因となって様々な症状が引き起こされるアレルギーです。小麦に含まれるタンパク質はグルテン以外にも1000種類以上あるので、人によってはグルテンアレルギーではない場合もあるそうです。
小麦を食べるだけでなく、小麦の粉を吸い込んだり、肌につけたりすることでもアレルギー症状が出ることがあります。即時性アレルギーなので、アレルゲンである小麦を摂取後、すぐにアレルギー症状がでます。このため、アレルギーテストを行うことですぐにアレルギーがあるかどうかを判別できます。
セリアック病(グルテン過敏症)
俳優のディーン・フジオカさんやテニスのジョコビッチ選手がかかっているということで認知度が高くなった病気です。小麦アレルギーとの大きな違いとしては、小麦タンパク質の中でもグルテンに反応すること、摂取後すぐにアレルギー症状が出ないことなどが挙げられます。
セリアック病患者がグルテンを含む食品を摂取すると、自己免疫機能が過剰反応し、自分の小腸を攻撃して炎症が起こります。ひどい場合には小腸から栄養を取り込むことができず、栄養失調になることもあるのだとか。
グルテンを含む食品を摂取後、時間をおいてから症状が出る遅延型食物アレルギーなので、即時型である一般的な小麦アレルギー検査をしてもセリアック病であるかどうかは判断できません。遅延型アレルギー検査や遺伝子検査を行う必要があります。
グルテン不耐症
グルテン不耐症はセリアック病に似た症状を起こしますが、大きな違いはグルテン不耐症は自己免疫疾患ではないという点です。
グルテン不耐症患者はグルテンを消化する酵素が不足あるいは欠如しています。なので、グルテンを消化することができません。ねっとりと重いグルテンが排出されるまで腸に留まるので、膨満感や消化不良、疲労感や異常な空腹感などの諸症状を引き起こします。
グルテンが長く留まるため、時には腸が炎症を起こすこともありますがこれは2次的な症状で、セリアック病のように自己免疫機能によって引き起こされる炎症とは異なります。これがグルテン不耐症とセリアック病が混同される原因のようです。
グルテン不耐症を患うほとんどの人が遅延型アレルギー反応を示すので、遅延型アレルギーで検査をすることも多いそうですが、一部の人は遅延型アレルギーの検査でも反応がでないようです。
時間はかかりますが、2週間、グルテンを含む食品を避けるチャレンジテストを行うことが一般的です。
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(運動誘発性小麦アレルギー)
運動誘発性小麦アレルギーは、小麦アレルギーの中でも、運動したときにだけ症状が現れるという変わったアレルギーです。
小麦を摂取してから運動後、強いアレルギー症状(アナフィラキシーショック)が現れます。激しい腹痛や吐き気、呼吸困難、意識障害などを引き起こし、ひどい場合には死に至ることもあります。いろいろ条件があるので、詳しくはこちらの論文をご覧ください。
わたしは「運動誘発性小麦アレルギー」と「グルテン不耐症」
これまで記事の中で何度か「わたしは軽い小麦アレルギー」という書き方をしてきましたが、正確には「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(運動誘発性小麦アレルギー)」と「グルテン不耐症」の二つかと思われます。参考になるかもしれませんので、それぞれ発覚した経緯について書いていきます。
思い返せば子どものころから腹痛が多かった
運動誘発性小麦アレルギーとグルテン不耐症であることが分かったいま思い返してみれば、子どものころから症状はありました。
給食のあと走るとお腹が痛かったり、食後はだるく微熱が出たり、就寝後に激しい腹痛で目が覚めたり。前者2つに関しては「ご飯の後に走ればそうなる」とか「誰でもだるくなる」と言われ、そういうものかと思っていました。
しかし激しい腹痛はさすがにおかしいだろうと、何度も病院に行ったのですが原因は分からず仕舞い。そのうち、時間が経てば治まるのだからと我慢するようになってしまいました。
他にも花粉症やエビ・カニアレルギーなどアレルギーが多いので、何度も即時型アレルギー検査を受けたのですが、小麦アレルギーと診断されたことは一度もありません。このせいで運動誘発性小麦アレルギーとグルテン不耐症に気づくのが遅れたような気もします。
ドイツに来て激しい腹痛が悪化
ドイツに来てからも症状は治まることなく、激しい腹痛が起こる頻度は多くなり、痛みもひどくなっていきました。いま思えば、グルテン量の多い強力粉で作られたパンやパスタ、ピザを食べることで、症状が悪化していったのでしょう。
特に夫が出張で不在の時に起こることが多く、行動を洗い出してみると「昼食に厚切りの食パンを食べる」「午後にジョギングをする」という2点が共通することが判明。
この2点から、夫が運動誘発性小麦アレルギーに関する論文を発見し、自分が運動誘発性小麦アレルギーであることが分かりました。
近所のスーパーで見つけた食パン一斤が甘くてもっちりしていてとても美味しく、けれど夫はさほど好きではないので、一人で厚切りにして食べていたんです……。まさかこれが原因だったとは。
運動誘発性小麦アレルギーの症状
あくまでわたしの場合ですが、運動誘発性小麦アレルギーの症状について書いておきます。
- 仰臥できないほどの激しい腹痛
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
- 蕁麻疹
- 血尿
などが一晩で一気に襲ってきます。最後に発症したときには本当に苦しく、救急車を呼ぼうかとも思ったのですが、夫不在中に入院は避けたいと我慢してしまいました。しかしあとから論文で、アナフィラキシーショックで死亡した事例を見て肝を冷やしました。我慢強いのも考えものです。
後日かかりつけ医に行ったのですが「いまは治まってるの?」と聞かれ、「はい」と答えると「ならよかった」と言って話が終ってしまいました。アレルギーは症状が出ているときに病院に行かないといけませんね。
調子が良くなってきて、グルテン不耐症発覚
ともかく小麦を食べた後には運動しないことにしたら、就寝後の激しい腹痛が起こることはなくなりました。よかったよかった。と思いきや、あいかわらず食後の腹痛や倦怠感、微熱、軽い蕁麻疹などの症状が治まりません。おや?
運動誘発性小麦アレルギーだと分かる前、長年患っていたバセドウ氏病の放射性ヨード治療を受けるべく、ドイツの大学病院に一週間ほど入院したことがありました。放射性ヨード治療なので、入院後もしばらくステロイドを飲む必要があり、半年ぐらいは副作用に悩まされながら寝たり起きたりの生活をしていました。
でも治療後すでに1年が経過し、いくらなんでも副作用でもないだろう、とあれこれ調べてみたら、グルテンを消化する酵素が不足・欠如しているグルテン不耐症という病気にたどり着きました。ああ、まさにこれ。
バセドウ氏病だと平熱が高く、治療後も副作用などで微熱が続いていたので気づかなかったのですが、他の病気が良くなってきたことで、ようやく自分がグルテン不耐症だと気づけたのです。幼少期から数えて苦節40年。長い道のりだった……。
その後、グルテンフリーの食事をするようになると、めきめきと調子が良くなり、語学学校にも通えるようになりました。元々アレルギー体質なので万全というわけではありませんが、いまではそこそこの調子を保てるようになったので、気づいて本当によかった!
グルテン不耐症の症状
こちらもあくまでわたしの場合ですが、症状を挙げておきますね。結構意外な症状があります。
- 膨満感
- めまい・ふらつき
- 蕁麻疹
- 微熱
- 空腹感
- 倦怠感
- 集中力の欠如
- ガス
- 血尿
- 関節痛
「空腹感」は意外な気がしますが、アレルギー物質などを摂取した場合に、アレルゲンを早く排出するために体が食べ物を欲するので、異常な空腹感が起こることがあるのだそうです。
たしかにグルテンを食べてる間は、食事中からお腹が空くこともあり、空腹で頭痛がすることもあったので、精神的にかなりつらかったです。まあだいたいはあきらめて食べていたのですが。おかげさまでドイツに来てからかなり太ってしまいました……。いまは普通の食事量です。よかったよかった。
病院でも気づけないグルテン不耐症
グルテン不耐症に関しては、上記のような症状があるからと病院に行っても、お医者様でも気づけないようです。本人ですら気づかないことが多いのでしょうがないですね。
しかし、海外に来てからあまりに長く原因不明の不調が続くというのであれば、グルテンフリー生活を2週間ほど試してみるといいかもしれません。グルテンを抜いて悪いということはありませんし、もしグルテン不耐症でないことが分かれば、美味しいパンが食べられる生活に戻るだけです。羨ましい。
グルテン不耐症だと気づいてよかったこと
わたしはグルテン不耐症だったので、今後もグルテンフリー生活を続けることになります。しかし悪いことばかりでもありません。
もちろん体調も良くなりましたし、さらに自分の食事に自覚的になったのはとてもいい変化だと思います。
自分が食べているものに何が含まれているのか。外食先ではなにを食べればいいのか。自分が食べたいものを食べるにはどうすればいいのか。
そんなことをよく考えるようになりました。日本にいたころは料理が好きではありませんでしたが、いまは必要に迫られたこともあり、いろんなものを手作りしています。これが結構面白い。
通常のレシピだと小麦を含むので作れないものを、食材の特性を考えながらあれこれ試行錯誤するのは科学の実験みたいです。
また、欧米では日本に比べて小麦アレルギーの人が多く、スーパーにグルテンフリーの食品があるのも助かっています。日本ではなく、ドイツに来てからグルテン不耐症だと分かってよかったかもしれません。
まとめ
いずれにせよ健康第一。健康じゃないと語学学校にも通えませんしね(切実)。海外生活を楽しむためにも、健康には気をつけていきましょう!
また、試してみてよかったグルテンフリーレシピなども更新していきますね。