語学学習は筋トレに似ている

十数年前、100万円近くかけて語学学校に通ったにもかかわらず、ほとんど英語が話せるようにはなりませんでした。いま思えばどこがダメだったか分かるので、自戒をこめてまとめておきます。

スポンサーリンク

高い語学学校に通えば話せるようになるんじゃないかという幻想

annemcdon / Pixabay

きっかけは当時つきあっていた夫が「ポスドクで海外に行こうかと思っている」と言った一言です。おお!マジか。海外に住んでみたいとは思うものの、チャンスがなかったわたしは大乗り気です。「わかった!心構えしておくね!」と、「ついてきてくれ」と言われたわけでもないのに英会話学校に通い始めました。海外といえばなにはともあれ英語だなと考えたわけです。気が早い。

高額レッスンでプレッシャー作戦は成功

わたしが選んだのは有名な英会話学校ベルリッツです。それもフリータイムのマンツーマンで超お高いコース。当時で半年40万円くらい。半年延長してもう40万円。教材費や事務手数料やなんやかんやで結局1年で100万円くらい支払いました。しかも教育訓練給付の対象外だったのですべて自腹。その年のボーナスはほぼ英会話に消えました。

決してお金に余裕があるわけではなく、自分の自堕落な性格を考慮して、高い語学学校に通うことでプレッシャーをかけようとしたんです。1コマ1000円ぐらいだと「……ま、いっか」でさぼりそうだけど、1コマ8000円ぐらいにもなるともったいないから意地でも通うだろうと。むしろ貧乏くさい性格だから有効な作戦だと言えるでしょう。実際、仕事が忙しかったわりには1レッスンも無駄にすることなく最後まで通い続けました。「高額レッスンでプレッシャー作戦」は大成功です。

レッスンに通うことが目的化してしまって失敗

しかし成果はというとさほど上がらず……。あえて言うなら、外国人と接する機会もほとんどなかったので雰囲気に慣れたことがよかった点でしょうか。初回のレッスンなんて緊張で震えてましたからね。ビビリなんです。

成果が上がらなかった原因は、ひとえにわたしの考え方にありました。高額レッスンでプレッシャー作戦により、レッスンに通い続けたのはよかったのですが、途中から「英語を学ぶ」という主旨を忘れて「レッスン代を無駄にせず通い続ける」ことが目的化してしまったのです。おかげでものすごくやり遂げた感はあるものの、英語はほとんど話せないままという結果に終わりました。

たとえるなら、通信空手で強くなろうとするようなもの

この状態をたとえるなら、通信教育で空手を習って強くなろうとしているのに似ている気がします。通信教材をすべて読み終わり、課題を提出したからと言って、いきなり強くはなりませんよね。知識を入れた後は実践が必要なのに、わたしはこれを怠ってしまいました。

誤解のないよう申し添えておくと、ベルリッツはいま思い返してみてもいい学校だったと思います。「通じればいいや」という感じのジャンクな英語ではなく、「ビジネスレベルでも恥ずかしくない正しい英語を」という指導方針だったので、いつもきちんと間違いを正してくれました。

ただそのせいで、わたしのような文法は理解できるけど話せないタイプは、間違いをしないように熟考してから話すので口数が少なくなってしまいました。日本人らしい減点法思考で、実践の機会を自分で減らしてしまったのです。

こうして「高い語学学校に通えば話せるようになるんじゃないか」という、わたしの他力本願な甘っちょろい幻想はもろくも砕かれてしまいました。

ドイツに住みはじめて英語学習法が激変

その後、夫は目的どおりポスドクとしてドイツで働くことに。わたしも仕事を辞めてドイツに渡りました。

ドイツに住みはじめたからと言っていきなりドイツ語が話せるようにはならないので、しばらくはどこでも英語で話すことになります。ドイツ語に比べればまだ知識があるとはいえ、英語も通信空手しか習っていないのにいきなり大会に出場するようなもの。

結果はもちろん惨憺たるもので、しばらくは英語もドイツ語も話すのがイヤになってグレて引きこもっていました。

疑いながら「ぜったい音読」を始める

170117_zettaiondoku

しかしグズグズ言ってもいられません。毎日生活しなければいけないので、あきらめて語学学習に取り組むことにしました。いろいろと試行錯誤して勉強した結果、最も効果があると思ったのは「ぜったい音読」という教材です。

「ぜったい音読」の理論は簡単で、英文を聞いて書いて口に出してトレーニングするというもの。英文はほとんど辞書を引かずに意味が分かるレベルの文章を選びます。わたしが使っていた教材は初心者用で、中学1~2年生ぐらいの教科書から選んだ英文が載っていました。正直、めちゃくちゃ簡単です。

ええ~、ほんまかいなぁ。こんな簡単な文章を書いて口に出して読んだからって英語が話せるようになるんかいなぁ。と、初っ端から疑ってかかっていました。しかし帰国子女でもなく留学経験もない夫が「これで英会話が上達した」と言うのです。たしかに夫が英語を話しているところを見ていましたし、騙されたと思って始めてみることにしました。

「ぜったい音読」は「英語の筋トレ」

始めてみると、かなりキツイ。なにがキツイって、つまらないんです。知らない単語があるわけでなく、意味が分かる文章をただひたすら聞いて書いて読んで聞いて書いて読んで聞いて書いて読んで……。つまらん!激しくつまらん!

しかし1か月ぐらい経つと、なんとなく手ごたえを感じてきます。頭で考えなくても簡単な英文なら話せるようになってきました。主語+述語とか、主語+述語+目的語というような単文が身についてきたようです。3か月ぐらい経つと、節を含む複文も少し話せるようになってきました。おおおおお!効果あるッ!!

取り立てて特別なこともしていないのに、どうして話せるようになってきたんだろうと考えてみたら、本の中に何度も登場する「トレーニング」という言葉で気づきました。ああ、これは「筋トレ」なんだと。

通信空手だと知識はあっても体が出来てない状態です。トレーニングして体を作り、技を実践して、ようやく強くなっていく。「ぜったい音読」はこの体を作る筋トレのようなものなんだと思います。日本人は口周辺の筋肉が弱くて発音できない音があるというので、本当に口周辺の筋肉を鍛える「筋トレ」としての効果もあるのでしょう。

トレーニング中は結構つまらないところも筋トレとよく似ています。しかし始めたときには効果が分かりにくいけれど、真面目にやり続けたら数か月後には確実に効果がでてきます。

語学学習も筋トレもサボると衰える

ドイツに滞在していた1年間、「ぜったい音読」を続けていると簡単な日常会話程度ですが英語が話せるようになりました。大学受験のときに知識を詰め込んでおいたのも功を奏しました。「英語の筋トレ」をしたおかげで、死蔵されていた知識が活用できるようになったようです。大学受験も役に立つものですね。

しかし、日本に帰国後は英語もドイツ語もサボりまくり、どちらも如実に衰えてしまいました。十数年後、まさかまたドイツに来ることになるとも知らず……。

いまはぶよぶよの贅肉がついた体のような状態なので、またちゃんと「筋トレ」しなくちゃなぁと思っています。そして本当に太っているので本物の筋トレもしていきたいところ。

ちなみに「ぜったい音読」は1200円ぐらい。ベルリッツの80分の1以下です……。高級スポーツジムに入会しただけで安心しちゃったけど、自宅で真面目に筋トレした方が効果があったっていう感じです。結局、どこでトレーニングするかじゃなく、自分ががんばることが重要なんでしょうね。

役に立った!面白かった!と
クリックしていただけると嬉しいです^^
にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ 

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする